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ハードウェア戦争
オーディオという趣味がマイコン(死語)やパソコンに取って代わられたように、CDが普及するまでオーディオソースといえばFMであった。
なぜ今、FMの話からなのか?
それは自分でも意外に思うのだが、最近面白いFM番組を耳にすることが多く、久しぶりにFMを聞くことが多くなったからなのだ。
その昔、オーディオ雑誌が"このレコードのサウンドはいい"といくら書き立てても、レコードを思う存分に購入できる人は限られていたので、FMチューナーはお金のないオーディオマニアにとってはなくてはならない存在だった。
その昔というのは20年以上前のことだが、それから云十年、FM雑誌はおろか新聞のFM番組欄も見なくなってしまっていた。

当時、FMチューナーといえば某S社か某K社だった。
この場合、S社とはS○N○社のことであり、K社とはK○○W○○D社のことだ。
このS社とK社の製品スタンスにはかなりの違いがみられたように思う。
ブランドでいえば、間違いなくS社に軍配があがった。その頃S社といえば、オーディオ業界そのものを指すくらいのものすごい勢いがあった。
だが、S社の高級品がドシンという小気味のよい重低音を放ったのに対し、同社の低価格帯の製品はトンという低音しか出なかったような気がする。
一方K社の製品は高級品ならドシン、低価格品でもドンくらいの音が出て、名より実を取るあまりお金のないオーディオを趣味とする人はK社を選んだものだった。つまりベースとバスドラの音が分離できる低価格チューナーといえばK社だったのである。
CDの本格的な普及によって、FMチューナーの存在が人々から忘れ去られるまで、両社はともに性能とシェアを競いあった。
数年間、両社のFMチューナーは年に2dBずつSN比を上げていったとんでもない時代があった。あまりに長い間そんな状態が続いたので、本当は10dbくらい楽勝で性能アップできるのに、わざと小出しにしているのではないかとか勘ぐられていたくらいであった。
そんな中、先にFMチューナー市場を撤退したのはS社だったような気がする。
ホントにそうか? 私の記憶である。あてになるはずはない。
が、尊敬する故・長岡先生のレビューにも、当時S社がある機種を最後にFMチューナー市場から撤退するということが書かれていたような気がするのだ。
とにもかくにもCDの普及により、音質の悪いFMはもはやオーディオソースとしての意味を失っていった。「悪い音質の物を録っておいても...」というわけである。
FMチューナーを最近動かしていないなあと思っていた矢先、「もう売れないからFMチューナーは作らない」といったのがS社だった(ような気がする)。
S社が撤退宣言をした年の前後、K社はSN比を、前年機比5dBあげた製品を出していたような覚えがある。時代の流れに対する最後の抵抗といったアプローチだった。

その後かなりたって、S社はFMチューナー市場に再び参入してきたようだった。
そのS社のチューナーの音を、"ホウ"ってなぐあいに店頭で聞いてみたことがある。
その結果は... 意外なものであった。
どうせ大したことねーんだろッ? という私の安かろう悪かろうザマミロ期待を裏切って、そのFMチューナーは価格が2万円以下にも関わらず、その昔同社が出していた高級デジタルチューナーと同じような音を出していたのである。
それはその昔の高級級チューナーとは比べ物にならないくらい軽量で、内蔵されているトランスなど取るに足らない代物のはずなのに...
まあ店頭での話だし、じっくり聞いたわけでもないので、どこまでかつての高級FMチューナーに肉迫しているかまでは聞き取れなかったが、しっかりとドシンというバスドラが聞いてとれたのだった。
たしかにソースもよくなった。放送出力の技術も上がっただろう。チューナーのテクノロジーも比較にならないはずだ。
その昔のオーディオ全盛時代、どのメーカーのものがいいだろうかと、購入するチューナーの性能をアチコチ各社のカタログで比較検討していたのがバカバカしくなった。
今まさにHDDレコーダーが人気の花形である。いろいろな雑誌がどのメーカーのどの製品がよいか競って紹介記事を掲載している。だが、最新機種でも使い勝手の点で過渡期のようだ。
この競争は、画質に加えて録画のしやすさ/再生のしやすさという複合操作技術を競い合うという点で、その昔のFMチューナー戦争とは内容を異にしているようだ。
だが私は、かつてのFMチューナー戦争と現在のHDDレコーダー競争とが妙にオーバーラップして、なんか納得のいかない複雑な思いになった、のである。
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